自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

自作キーボード用65%ケース『GL516』を設計した話をするよ!

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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今回は最近私が注力していた65%サイズの汎用ケース「GL516」の説明をしたいと思います。

GL516とは

GL516(ジーエル516)はGeneral Layoutかつ5行×16列サイズのキーボードケースです。

Tofuケースを改造する際やBezelケースを設計している際に、Poker互換ケースのレイアウト自由度の低さ、ブロッカー※が使えない点が非常に不満だったのがキッカケです。

※キーがない部分にケースがせり出している部分。

その不満点を解消しつつ、無線化や設計のテンプレート化などの様々な要素を追加していった結果、とても特徴が多いケースになりました。

一つずつ詳しく説明していくので6,000文字を軽く超えてしまいましたが、是非お付き合いいただければと思います。

ユーザ向けの特徴

まずは使用ユーザが享受できるGL516の特徴です。

  1. スイッチプレートの両端でマウントし、自由なキーレイアウトを実現
  2. ケース最上部に各レイアウト専用のアクリルブロッカープレートを装着可能
  3. キーキャップに合わせてアクリルプレートの着せ替えが可能
  4. ケースフォームやガスケットマウント化などのカスタマイズも手軽に可能
  5. 用途に合わせてバックプレートを組み換え可能
  6. BLE Micro Proを利用したBluetooth無線接続が可能
  7. ローンチ用に日本語65%配列のJ73GL、AliceレイアウトのA52GL、Naked64SFの50%版のN51GLを用意
  8. 無限の可能性やSU120などを使用してのオリジナル配列も実現可能

1.スイッチプレートの両端でマウントし、自由なキーレイアウトを実現

Poker互換ケースにはPCBをマウントする用のネジ受けがキーの間に存在します。

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Poker互換ケースのネジ受け部(Bezelケース)

そのため、PCBを設計する際はこのネジ穴に干渉しないキーレイアウトに制限されるという欠点が有りました。

※BoardwalkPCBのようにネジ受けと干渉するスイッチを削るように指示するものもあったり、底上げしてネジ受けを避けたりしている例もあります。

GL516ケースはキーの間のネジ受けをすべて排除し、スイッチプレートの両端のみでマウントすることでキーレイアウトを完全に自由にしました。

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GL516ケース。底面にネジ穴はなく、完全にフラット

2.ケース最上部に各レイアウト専用のアクリルブロッカープレートを装着可能

ケース最上部にアクリルプレートをマウントするネジ穴を10個用意することで、どのようなレイアウトにも対応したブロッカーを用意可能です。

このブロッカープレートを用意することで、Poker互換ケースに独自レイアウトのPCBを組み合わせた時にありがちだった凹んだスペースを可能な限り無くすことが出来ます。

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A52GLのミスティスモークアクリルのブロッカープレート。透明に近いが、ガラスのような質感で綺麗に見える

また65%キーボードにありがちな不満として、誤打鍵に繋がるエンターキー右のキーに対しても、用途や人に合わせたブロッカーを手軽に用意する事が可能です。

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J73GLは本来エンターキーの右にもキーを配置可能だが、ブロッカープレートにより自然に隠せるようになっている

もちろん最初はブロッカープレートを用意せずにレイアウトに慣れるまで試してからブロッカープレートを発注することも可能です。

3.新しく買ったキーキャップに合わせてアクリルプレートの着せ替えが可能

キーボードまたはケースを購入する時に迷いがちな色も、GL516ならブロッカープレートのアクリルをオーダーするだけなので後からでも簡単に変更可能です。

新しく買ったキーキャップに合うようなアクリルプレートに変更する、なんてことも気軽に楽しめます。

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N51GLのブロッカープレートはグレースモーク。GMK Future Funkに合わせている

4.ケースフォームやガスケットマウント化などのカスタマイズも手軽に可能

GL516のスイッチプレートのマウントはネジによるマウント、ネジ下に1.5mmシリコンを貼り付けるハーフガスケットマウント、更にネジではなくプレートに貼り付けた5mmPoronスポンジをアクリルブロッカープレートで挟み込むガスケットマウントに対応しています。

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ケースに貼り付ける1.5mmシリコン(写真左)とプレートに貼り付ける5mmのPronスポンジ

また、ケース内部にネジ穴が無いのでケースフォームもシート状のものをハサミで切り出すだけで簡単に作成可能です。

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ケース底面に1.5mmのPoronシートを敷くとプレートのたわみも感じなくなる。オススメの改造の一つ

このように色々好みに合わせてカスタマイズしていくことで自分好みの打鍵感、打鍵音に近づけていくことが出来ます。

このN51GLは手軽に行えるカスタム(ボトムシート、ガスケットマウント、マスキングテープMod)を施しており、打鍵感は良好です。

後はこのN51GLにフォームを詰め込めばフルカスタムでしょうか。

5.用途に合わせてバックプレートを組み換え可能

キーボード背部を塞ぐバックプレートを2ピース構造とし、必要な機能を持つプレートを組み合わせることで様々な用途に対応可能です。

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とりあえず5種類用意しましたが、もう少し増やしても良いかも

例えば、ブランクパネルとケーブル穴が空いたプレートを使って中のProMicroからケーブルだけを引き出したり、

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気軽にケーブルの付け外しがしたいのでプレートマウントUSBケーブルを使ってUSBコネクタをバックパネルまで引き出したり、

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KBD67mk2等のエクストラPCBを再利用するためにUSBコネクタが入るような穴を開けたパネルを用意してみたり、

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これはJ73GLのPCBなのでコネクタは来てませんが、USBは余裕で挿せます

単4電池を搭載できるパネルを使って無線化したりが可能です。

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他にも色々な組み合わせが可能ですし、今後新しいプレートも作っていきたいと思っています。

6.BLE Micro Proを利用したBluetooth無線接続が可能

海外で開発・販売されるカスタムキーボードで、Bluetoothによる無線対応例は少ないですし、日本国内の技適を取得しているものはほとんど存在しません。

そこで、日本でせきごん氏が開発するBLE Micro Proと電池をマウントできるようにし、GL516互換PCBにBluetooth接続機能を持たせることができるようにしました。

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電池は単4電池を2本搭載するプレートを用意。3Dプリンタ製の電池ケースを装着して見た目もスマートに

※GL516互換PCBのすべてがBluetooth接続に対応しているわけではなく、比較的容易に機能を持たせることができる、という意味です。

より持ち運びを容易にするためにボタン電池を使用するコンパクトなものも設計予定です。

7.ローンチ用に日本語65%配列のJ73GL、AliceレイアウトのA52GL、Naked64SFの50%版のN51GLを用意

GL516を幅広い人にニーズがありそうなものを色々作ってみました。(N51GLは完全に私の趣味なので販売方法は未定)

J73GLは日本語配列の正統派65%キーボードで、フルキーバックライト搭載です。

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A52GLは人気のAlice配列50%キーボードです。バックライト等は非搭載です。

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N51GLは私が好きなNaked64SFに近い配列で、真ん中の30mmロータリーエンコーダと花柄に光るLEDが特徴です。

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J73GLとA52GLは7sProやJISplit89と同様に、部品の殆どを工場によって実装するため組み立てはとても簡単になる予定です。

N51GLは需要が読めないので少し悩み中です。

8.無限の可能性やSU120などを使用してのオリジナル配列も実現可能

無限の可能性やSU120などの1uサイズのPCBをハンドワイヤーで繋いでいくタイプのキーボードも、GL516用のトッププレートを用意すればケースを利用可能です。

トッププレートの作成は比較的簡単ですので、PCBを設計するまでは自信がないけど、もう少し快適に使用したいという方にも最適です。

設計者向けの特徴

設計者向けの特徴、というと大半の人は自分には縁がない物と思ってしまうかもしれませんが、ちょっと待ってください。

買ったキーボードで完全に満足したのであればそれはそれで十分喜ばしいのですが、少しでも不満があるならちょっとだけ改良したり、オリジナルレイアウトのものを設計してみるのも良いかもしれません。

このGL516ケースは色々なレイアウトが実現できるだけでなく、とにかく簡単に設計ができるようにテンプレートを整備しているも特徴なのです。

  1. マイコンにPro Micro及びBLE Micro Proを使用可能で設計も簡単
  2. 設計ファイルとファームウェアのテンプレート化により初心者でも設計が容易
  3. 設計したスイッチプレート及び実装プレートのみで販売することが可能
  4. ケース以外すべての部品がオープンソースなので、オリジナルのカスタマイズパーツも設計可能

1.マイコンにPro Micro及びBLE Micro Proを使用可能で設計も簡単

アルミ製のケースに対応するPCBはMCUをPCB上に実装する場合がほとんどですが、GL516はボトム部分に大きな溝と空間が存在するのでPro MicroやBLE Micro Proを使用可能です。

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テンプレート上にもProMicroを配置できる位置を記載

Pro MicroやBLE Micro Proを使用することで、基板の設計や配線がものすごく簡単になり、不慣れな方でも簡単に設計できるようになりました。

Pro MicroやBLE Micro Proをケース内部に内蔵することで不便になるケーブルの取り回しについては、パネルマウントUSBケーブルを使用することで、普通のキーボードと同様にケーブル脱着ができるようになります。

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背の高いコンスルー(6mm)を使用することでソケット上でもケーブルを通せる

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2.設計手法及び設計ファイル、ファームウェアのテンプレート化により初心者でも容易に設計可能

GL516の互換PCBはテンプレートから手順通りに作成していくだけで、簡単にファームウェアまで用意できるように準備しています。

github.com

テンプレートの段階でDuplex-Matrixに対応し、ピン数に余裕もあるので、ロータリーエンコーダやOLEDなども追加が可能です。

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最大80キーに対応したテンプレートから作りたいレイアウトに合わせて消していく

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J73GLの回路図。7キー分のキーとダイオード、LEDを消しただけ

私も設計手順をまとめてブログに公開したり同人誌にまとめたりする予定ですが、βテストに参加されている屑餅さんがDiscordに私が書いた手順をまとめてくれています。

屑餅さんはこれが初設計だということですが、オリジナルレイアウトのPCBの発注まで実施出来ています。

zenn.dev

3.設計したスイッチプレート及び実装プレートのみで販売することが可能

自分だけのオリジナル配列のPCBを発注すると少なくとも4セット分の余りが出るけど、ネジ詰めなどのキッティングは大変なので頒布までは…という方も多いと思います。

このGL516互換PCBの頒布をする際に発送するのは、最低限スイッチプレートと実装プレートの2種だけなのでとても手軽に頒布できます。

テンプレートに沿った設計ならビルドガイド(これから公開予定)もGL516に共通のもので大丈夫ですし、頒布へのハードルは非常に低いと思います。

頒布数を多くするならブロッカープレートのアクリルカットデータを遊舎工房様に登録依頼をしておくと購入者の手間も省けるので、頒布数を多く計画している人は是非ご検討ください。

4.ケース以外すべての部品がオープンソースなので、オリジナルのカスタマイズパーツも設計可能

スイッチプレートと実装プレートだけではオリジナリティが足りない、という方はバックプレートやボトムプレートに刻印やシルク印刷を施したバージョンも設計してはいかがでしょうか。

GL516の各プレートはすべて公開されているので、色々な色のプレートを製造したり、オリジナルロゴ入りのプレートなども製造・頒布可能です。

github.com

設計したPCBと同色のプレートを同梱して頒布することで統一感を持たせ、差別化を図ることも可能です。

GL516ケースのスペック

寸法 326mm×115mm×29mm
重さ(ケースのみ) 約500g
タイピング角度 6.5°
カラー(予定) アルマイト
ブラック、シルバー

GL516互換PCBギャラリー

GL516のβテスト参加者のGL516互換PCBです。

中にはキーボード設計自体が初めてという方もいますが、無事にキーボードとして使用できるように仕上がっていて、とても嬉しいです。

※以下のGL516互換PCBの頒布は未定です。

オタヒーのサメ(@otahinosame)さんの「9674GL」

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40%キーボードにテンキーとファンクションキーを追加したレイアウトです。

40%キーボードが使いこなせる人でも、文字打ち以外の用途では何かとテンキーやファンクションキーを必要としたりもします。

そこで65%から40%を引いた残りの25%に欲しい機能を詰め込んでフルキーボードと遜色ない使い勝手にした、というイメージでしょうか。

機能的な面ももちろんですが全体的に美しくまとまっていて、とても格好良いですね!

屑餅(@kuzumotchi)さんの「Ortho312plus6」

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65%サイズに42キーという40%レイアウトを収めたレイアウトです。

左右のアルファキー間は4キー分(つまり約8cm)離れていて、40%分割キーボードに近い使い心地ではないでしょうか。

巨大な余白に配置された屑餅さんのアイコンもとても特徴的でいいですね!

ガチハム(@gachiham)さんの「名称未定」

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こちらは一般的なANSIレイアウトに、欲しい人の多そうなカーソルキーを配置した、まさに王道のレイアウトです。

フルキーバックライトを搭載可能で、カーソルキー脇にはインジケータも装備、OLEDには「手を動かせ」の文字や様々な情報も表示可能で、とても機能が充実しています。

まとまりもいいですし、あえてブロッカープレートで差し色を入れたりも楽しそうですね!

まーびい(@marbySAN)さんの「Tyxos63」

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パッと見てもかなり独創的なレイアウトですね。

キー数的に40%キーボードにマクロキーを追加したような使い心地でしょうか。

右上にロータリーエンコーダも用意していたり、スイッチプレートの両端にカットアウトを入れていたり、色々こだわりも詰まっていそうです。

モデファイヤキーもただ離しているだけでなく使いやすいように配置されているようで、まさに自分の用途に合わせたカスタムでとてもいいですね!

GL516ケース及び互換PCBの販売について

GL516ケース及びJ73GL、A52GLの互換PCBの販売は遊舎工房様にてプレオーダー方式にて販売予定です。

プレオーダー分を発送次第、遊舎工房様で継続して在庫販売をする予定です。

気になる方は是非チェックをしておいてください!

お願いします!

おわりに

私がGL516ケースでやりたかったことや特徴や狙いなどはいかがでしたでしょうか。

この他にも各々こだわりポイントは書ききれないほど満載なので、是非その手で確かめてみてください。

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

この記事はN51GLで書きました。