自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

フォースカーブ測定マシン「軸の秤」を紹介するよ!

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

今回はRomly(@Romly)様より依頼を受け、というより私がどうしても紹介させてくれとお願いして「軸の秤」を実現した記事です。

いや、このフォースカーブ測定マシンの「軸の秤」って凄いんですよ!

フォースカーブとは

皆さんはフォースカーブってご存知ですか?

こういうやつです。

スイッチを選ぼうとすると一度ならず見かけたことがある方も多いと思います。

知らない人に見方を軽く説明すると、メカニカルキースイッチは2種類に分けられます。

押し込む深さによって徐々に重くなっていくリニアタイプ、押し込む深さごとに感触が変わっていくタクタイルタイプ(音が出るクリッキータイプもこちら)です。

このタクタイルタイプのキースイッチはどれだけ口や文章で説明してもあまり伝わりません。

試しに前述のフォースカーブのスイッチ、Akko Lavender Purpleをフォースカーブを見ずに説明してみたいと思います。

このスイッチの一番の特徴は、何と言ってもスイッチ押下の最初に大きめなタクタイル(引っ掛かり)の山があることです。

押し始めてすぐに大きめな山があることで想像以上に重く感じ、誤打鍵防止効果が期待されるほどです。

その鋭い山を超えるとスッと抜けて底付きします。

最終的な重さ自体は重く感じませんが、打ち込んでいくと結構打ちごたえを感じます。

私が書くならこんな感じですかね。

ホワッと感覚くらいしか伝わらないと思います。

 

さて、ここでようやくフォースカーブの見方を説明します。

まずは横軸はTravel、ストローク量になっています。

押し込んでいく距離ですね。

ここのTravelを見ることで、押し込んだどの部分でどういう感触を返してくれるのかわかります。

この部分をパッと見るだけでこのスイッチは約3.8mmくらいの総ストローク量であることがわかります。

そして縦軸はForce、力です。

そのストロークに押し込むのに必要な力ですね。

横軸と合わせて見ると0.1mm~0.2mmくらいの部分に多くの力が必要(①)で、その後0.3mm~1.8mmくらいまで力が抜けていき(②)、その後ググッと上がって底打ちまで行く(③)、ということが分かります。

ちなみに下に2重になっている部分は戻っていくときの力です。

打鍵後に力を抜いたときにどのように指にフィードバックが返ってくるかの指標になります。

 

しかし、このように便利なフォースカーブは公式で用意されていないことも多いです。

それだけでなく「ホントか?」と思えるようなフォースカーブのものも有ったりします。

また、スプリングを入れ替えたりルブを行ったりすることでフォースカーブも変化する可能性もあり、知れば知るほど「何もわからん」という状態になったりします。

さて、この軸の秤はそんなフォースカーブを自分で測定できるマシンです。

出力されるフォースカーブ

早速測定したフォースカーブを見てみましょう。

さっきのフォースカーブと比較してみましょう。

どうでしょう。

結構近い、どころかかなりの部分で一致しているような気がしますね。

このフォースカーブは3つのキースイッチを各3回ずつ測定した結果の平均値から出しているので、ある程度個体差、測定誤差は排除出来ていると思います。

 

調子にのってフォースカーブが公開されていないFeker Holy Pandaも測定してみました。

かなり面白くなってきました。

ストローク量すら不明のスイッチのスイッチのフォースカーブを作れるのは非常に面白いですよ。

なんで測定するの?

「フォースカーブをどうやって使うかはわかったけど、なんで自分で測定するの?」

その疑問はもっともです。

フォースカーブは基本的に購入前に判断材料として提供されるものであり、買った後に測定することに意味はあるのかと。

想定できる用途としては以下かと思います。

  1. キーボードパーツショップなどがフォースカーブ不明のスイッチを販売するときのデータ取得用として
  2. 自分の好みとカスタムスイッチの研究用として
  3. ブログ記事作成用として

2にフォーカスして解説します。

特にタクタイルスイッチで好みのスイッチを見つけようとする場合、とにかく手当たり次第に試す以外に方法がない状況です。

更にカスタムスイッチまで選択肢に入れようとすると、現実的じゃない組み合わせを試すことになります。

その際にフォースカーブを測定しておくことで、好みのスイッチを見分ける指標になると思います。

また、発見したカスタムスイッチを発表する際、冒頭のように言葉で説明してもイマイチピンと来ないため、説得力を付加するためにも有ったほうが望ましいと思います。

何より、楽しんですよ、これ。

写真で見る軸の秤

あまり大きさはわからないかも知れませんが、測定器側は結構大きいです。

縦は20cmくらいありますし、内蔵するウェイトのお陰でかなりズッシリしています。

この独自プロファイルのオリジナルキーキャップが付属します。

筐体デザインは無骨でレトロな中に可愛さが感じられる雰囲気の造形でインテリアとしても違和感ない感じに仕上げられています。

動画で見る軸の秤

www.youtube.com

軸の秤で実際にフォースカーブを測っているところを動画にしてみました。

最初は手軽にTwitterに上げようと思ったのですが、思った以上にゆっくりで尺の制限に引っかかってしまったのでYouTubeにアップしました。

じっくりじっくり動いていく様はどこか可愛い感じがしますね。

軸の秤の組み立て

こんな感じでギッシリパーツ類が詰まって届きました。

並べてみるとこんな感じです。

3Dプリンタ製の部品が多いですが、かなりキレイにプリントされていると思います。

電子工作にあまり明るくない私にとっては初めて見るパーツが多く、とてもワクワクしました。

キーボードを作るのとは違った興奮ですね。

3Dプリンタ製の部品では軽いので、この様に鉄製のウェイトを中に仕込んでいきます。

かなりの精度でプリントされており、スッスッと入っていってとても気持ちよかったです。

細かい手順などはこちらのページから確認してみてください。

本当に難しいところはなかったですよ。

romly.com

購入先

booth.pm

コミックマーケット100で頒布される他、Boothにも追加される予定だと聞いています。

夏の工作として、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

おわりに

私が長年欲しかった軸の秤のレビュー記事が書けて嬉しかったです。

私はこの軸の秤をつかってキースイッチの話をまた書いていきたいと考えています。

そちらも是非ご期待ください。

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

この記事はNaked64SFv3 Proto3で書きました。