自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

【遊舎工房ギルドクエスト】Sunset Tactile Choc Switchesのレビューをするよ!

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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今回は遊舎工房のギルドメンバーとして、新しいキースイッチのレビューをします。

※本記事のSunset Tactile Choc Switchesは遊舎工房の提供を受けています。

遊舎工房ギルドって?

週報ブログの方では何回か紹介していますが、遊舎工房のアンバサダープログラムのことです。

yushakobo.jp

ギルドメンバーは遊舎工房のDiscordサーバに参加している人を対象とし、遊舎工房の取り扱っている各種キーボードのレビューやビルドログ、紹介動画の投稿をして盛り上げていこうという企画です。

自作キーボードに興味ある方は是非参加してみましょう。

購入ページ

[Pre-order] Sunset Tactile Choc Switchesshop.yushakobo.jp

遊舎工房の商品ページより引用

用語解説

まずは記事内に出てくる用語の解説からしていきます。

Choc v1スイッチ

CherryMX互換スイッチからマウスのスイッチまで、数々のスイッチを製造するKailh社製のロープロファイルスイッチです。

Choc v1スイッチ以外にも多くの似たようなロープロファイルスイッチを販売していますが、自作キーボードにおいてはChoc v1スイッチが主流です。

キーキャップが公式とサードパーティ含め、色々リリースされているのが最大のメリットで使いやすい点です。

スイッチのタイプ

スイッチにも色々なタイプが存在します。

ここでは代表的な4種類のタイプを紹介します。

リニア

CherryMXスイッチにおける赤軸・黒軸です。

キーを押す際に引っかかりがないため押す力を軽くしやすく、素早い打鍵が実現できます。

カニカルならではという感触なので、メカニカルキーボードといえばこれ!というくらい人気があります。

タクタイル

CherryMXスイッチにおける茶軸です。

キーを押す際に引っかかりを意図的に付けて入力の確実なフィードバックや誤打鍵防止が可能です。

メンブレンスイッチや東プレの静電容量無接点スイッチなどのラバードームを利用した感触に近いもので、根強い人気があります。

クリッキー

CherryMXスイッチにおける青軸です。

押下時にクリック音が鳴るタイプで、メカニカルキーボードといえばこのような音が出るキーボードを想像する人も多いです。

もっと正確に分類するとクリックジャケットタイプとクリックバータイプがあるのですが、どちらも音が鳴るという点では一緒です。

Choc v1スイッチはクリックバータイプのみとなります。

サイレント

いわゆる静音スイッチです。

スイッチの押下時に当たる部分にシリコンなどのパッドをつけて音を抑制しているために追加でコストがかかって高価になりやすいです。

サイレントリニア、サイレントタクタイルと前述のリニアとタクタイルに付加される形で分類されます。

Choc v1スイッチにはサイレントスイッチは無いのが残念な点です。

スタビライザーバー

Choc v1スイッチの内部に入っている針金です。

キーキャップの端を打鍵した際にまっすぐストロークするための部品ですが、あまり効果は分かりません。

このスタビライザーバーのお陰で初期のChoc v1スイッチは振るとシャカシャカ音が鳴ります。

クリックタイプのChoc v1スイッチとRed Proスイッチ以降は廃止されました。

フォースカーブ

スイッチの特性を表示するためのグラフです。

このフォースカーブを見ているとスイッチの傾向をなんとなく知ることができますが、当てにしすぎてガッカリすることが無いこともないので注意が必要です。

上図のように、スイッチのストローク距離に対して必要な力がグラフで表されています。

この図を見るとストロークの最初の方(0.5mm付近)にピークがあり、その後カクっと落ちる特性である、と読めます。

Choc v2スイッチ

Choc v1スイッチの後継、というわけでは全然ないです。

CherryMXスイッチ用のキーキャップが一部利用できたりできなかったりしますが、2u以上の長いキーの安定化のために使用するスタビライザーが販売されていないため、現時点では使いづらいと言わざるを得ません。

Choc v1スイッチには新しいスイッチが登場したりしますが、Choc v2スイッチには新しいスイッチも登場していませんし、日本の自作キーボードでは採用されることが少ない、ある意味不遇のスイッチです。

写真で見るSunset Tactile Choc Switches

まずは軽く写真を見てください。

※写真は素人なため、色味はあくまで参考程度にお願いします。

Choc v1スイッチのタクタイル事情

今までのChoc v1スイッチのタクタイルスイッチはBrownスイッチとちょっと重いBurnt Orangeスイッチの2種しかなかったのですが、個人的な感想を言うとタクタイル感が弱すぎて全く使う気が起きなかったです。

どれくらい弱いかというと、ゆっくり慎重に押している時に「ん?ちょっと引っかかる、か?」と感じる程度でした。

通常の使用時にはちょっとザラつく程度の感触で、私がタクタイルに求めている入力の確かなフィードバックと弾むように打鍵する楽しさを体験できるものでは有りませんでした。

Choc Brownスイッチと同様に最初からラインナップに有ったChoc Redスイッチも重く硬く振るとシャカシャカ音が鳴ると不満点が多かったのですが、Choc Red Proが登場した後は「ChocスイッチならRed Pro買っておけ。クリッキーが好きならChocのクリッキーは重さ別に複数あるぞ。タクタイル?知らないなあ」と書くくらいの状況でした。

次はもっといい感触のタクタイルのChocスイッチがほしい。

しかし、2020年のRed Proについて書いた最後の一文に対応するスイッチが、2年越しについに現れてくれました。

Sunset Tactile Choc Switchesの感触

Sunset Tactile Choc Switchesの特徴は、何はなくとも強いタクタイル感です。

この感触を私の拙い文章で伝えきるのは難しいので、いくつかの方法で伝えようと思います。

動画で伝えてみる!

まずは動画です。

Naked48LEDにSunset Tactile Choc SwitchesとChoc Brownスイッチを取り付けて交互に打鍵してみます。

一定の力で打鍵しようと努力してみましたが、どうでしょう?

Sunset Tactile Choc Switchesはカクっとした動きがありますが、Choc Brownスイッチはそのようには見えないと思います。

打鍵音もChoc Brownスイッチに有ったスタビライザーバーがなくなっているため、妙な雑音は聞こえなくなっています。

Chocスイッチに共通する強く底打ちした際のバネ鳴りは両者とも多少ありますが、これはバネを変えるかルブしないと直りそうも無いですね。

写真で伝えてみる!

Choc v1スイッチはステム(軸部分)の真ん中の段差の部分でカクッとするタクタイル感を生み出しています。

この段差が、スイッチの下半分の黒い部品の白いところに引っかかってタクタイル感が生まれます。

この段差、1mm以下の本当に小さなモールドの段差ですが、Choc Brownスイッチと並べると結構違うことがわかります。

この部分がChoc Brownスイッチより出っ張って段差が大きいことで強いタクタイル感を生み出しているのです。

しかし、ここの段差を大きすぎると、今度はバネを重くしないと沈んだまま返ってこなくなってしまいます。

そのバランスを見出すために、膨大な試作が必要であったことは想像に難くありません。

※上の写真は段差を分かりやすく見るために段差に塗られたルブを拭い取っています。

 最初の状態では両方べったりと塗られています。

フォースカーブで伝えてみる!

フォースカーブというスイッチを徐々に押していった際の力の変化をグラフ化したものがあります。

これもChoc Brownと比較してみます。

左がSunset Tactile Choc Switches、右がChoc Brownスイッチ

これだけを見るとストローク中のタクタイルの山の高さ自体はそんなに変わらない?と感じるかもしれません。

しかし、実際に触ると全然感触が違います。

これはタクタイルの山の位置が大きく影響しています。

Sunset Tactile Choc Switchesはストロークの最初の0.5mmあたりに山が来ることで「これからスイッチ押すぞ!」という感触がします。

Choc Brownスイッチはこのタクタイルの山がストロークの中頃(1.0mm)にあることで、助走がついた状態で山を一気に超えてしまうことが影響しているように思います。

Choc Brownスイッチはタクタイルの山の小ささと位置の相乗効果により本当にタクタイルを感じづらいですが、Sunset Tactile Choc Switchesは大きめのタクタイルの山がストロークの最初に位置することで強いタクタイル感を生み出しているのです。

 

どうでしょうか?

少しは伝わりましたか?

スイッチの感触、特にタクタイルスイッチの感触は伝えるのが大変難しいのですが、なんとか頑張って伝えてみました。

他のChoc v1スイッチに比べて少々値が張りますが、本当にいい感触のタクタイルスイッチですよ。

注意:Choc v1スイッチの分解について

本記事内のスイッチの分解は遊舎工房のオープン時の僅かな期間だけ販売されていた3Dプリント製のものを使用しました。

しかし、このようなスイッチオープナーがあってもChoc v1スイッチの分解は基本的にオススメできません。

Choc v1スイッチは分解時にケースの爪部分が割れてしまうことがありますし、一度分解するとケースの噛み合わせが緩んでしまって故障の原因になります。

どうしてもご自分でルブしたい場合は少し多めにスイッチを用意しておくことをオススメします。

購入ページ(念のためもう一回)

[Pre-order] Sunset Tactile Choc Switchesshop.yushakobo.jp

遊舎工房の商品ページより引用

おわりに

このSunset Tactile Choc Switchesが登場する際に聞いた「このスイッチはすごいぞ」という噂を聞き、遊舎工房さんに頼み込んで2個しかなかったサンプルのうちの1つを提供いただくことができました。

好きなChoc v1スイッチにいい感触のタクタイルスイッチが登場して本当に嬉しいです。

今なら「Choc v1スイッチにも良い感触のタクタイルスイッチありますよ!」と自信を持って言うことができます。

この記事が購入検討の一助になってくれれば幸いです。

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

この記事はNaked64SFv3 Proto3で書きました。