自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

メカニカルキースイッチの「速度」の話

こんにちは。サリチル酸です。

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書こう書こうと思ってだいぶ期間が空いてしまいましたが、また定期的にキースイッチについて書いていこうと思います。

今回はキースイッチの「速度」と「スピードタイプ」のスイッチについて書きたいと重います。

はじめに

この記事は私の主観を元に書かれています。

他の方が同じ様に感じる事を保証するわけではないので、参考にする場合は一つの目安として参考に留めるようにしてください。

用語解説は以前の記事を参照してください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

キースイッチの速度と本記事における速度について

スイッチの速度と聞いて、どのようなものを想像するでしょうか?

バネの軽さ、ではありません。

一般的には、「キーの反応点の近さ」です。

近ければ近いほど「速い」ですし、遠ければ遠いほど「遅い」となります。

この速度については、通常の文字タイピングでは誤爆のもとになったりするので過剰な速度はかえって不要ということも多いのですが、ことゲームにおいては重要視される要素の一つです。

ゲームにおいては相手よりも速く反応し、速く入力することが勝利への道です。

なのでゲーム用デバイスにスピードタイプのスイッチが採用されることが多いのです。

 

しかしながら、一回押すときに敏感に反応するだけでゲームに勝てるわけではない、と私は思うのです。

押している状態からパッと離してニュートラルの(キーを押していない)状態になり、もう一度押して反応するまでの速度も大事だと思っています。

そのため、本記事においては以下の2点のスピードを重要視して記載しています。

  1. 「押して」から「入力される」までの距離(アクチエーションポイント)
  2. 「押し切って」から「もう一度押せる」までの距離(総ストローク

以下図示した中の2点の数値ですね。

※アクチエーションポイントをロゴマークで表現しています
赤矢印が「押すスピード」、青矢印が「戻るスピード」です

測定方法について

触ったことがないスイッチを購入する際の目安として、フォースカーブを見たりしますよね?

フォースカーブとは、押し込んでいく距離と力の関係を図示したものです。

しかしながらフォースカーブが公開されていないスイッチや、信憑性が微妙なフォースカーブを公開しているメーカーがいたりしますので、今回は「軸の秤」というマシンを使って自分で測定しました。

「軸の秤」については以下の記事を参照してください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

アクチエーションポイントの測定はPC(Remapのテストモード)上でキーが反応した時点でのキーストローク(0.125mm単位)を確認することで測定しています。

記事内の数値は上記測定を3個違うスイッチに対して行い、その平均値を記載しています。

反応したことを確認してから素早く軸の秤のモニターを確認して距離を見ているので、0.1mmくらい深く出ちゃっているかもしれませんがご了承ください。

ちなみに、使用したマクロパッドは「ホットスワップ」「チルト角が0」という条件からMegalodon Macro Padを使用しました。

[GB] Megalodon Macro Padshop.yushakobo.jp

入手性について

各スイッチで記載している入手性の凡例は以下の通り。

 国内で購入できる

♨♨ 国内では購入出来ない、または100円/個を超える

♨♨♨ 複数のスイッチを分解して組み合わせるなど、改造する必要がある 

Cherry Speed Silver

入手性:♨♨

価格:147円/個

公称アクチエーションポイント:1.2mm

実測アクチエーションポイント:1.041mm(0.875mm、1.125mm、1.125mm)

公称総ストローク:3.7mm

実測総ストローク:約3.3mm

測定フォースカーブ:

解説:王道中の王道のCherry MX純正スイッチ。
   ゲーム用のキーボードや入力デバイスに採用されることが多いです。
   ボトムアウトの重さが公称のフォースカーブとちょっと違うんですが…?

購入先:

Amazon

・遊舎工房

Cherry MX スイッチshop.yushakobo.jp

Cherry Speed Silver(RGB)

入手性:♨

価格:92~150円/個

公称アクチエーションポイント:1.2mm

実測アクチエーションポイント:1.375mm(1.375mm、1.375mm、1.375mm)

公称総ストローク:3.7mm

実測総ストローク:約3.2mm

測定フォースカーブ:

解説:王道中の王道のCherry MX純正スイッチ、のクリア版。
   フォースカーブは大体一緒ですが、アクチエーションポイントが若干遠いみたいですね。(抜き出した3個の個体差の可能性はあります)
   ふもっふのおみせで安く買えるので、普通のCherry MX Speed Silverよりもちょっとコスパが良いです。(ただし配送料を含んでいません)

購入先:

・ふもっふのおみせ

https://www.fumo-shop.com/ducky-keyswitch-cherry-mx-silver.html

Amazon

Gateron G Pro 3.0 Silver

入手性:♨

価格:66円/個(or 99円/個)

公称アクチエーションポイント:1.2mm ± 0.3mm

実測アクチエーションポイント:1.333mm(1.25mm、1.5mm、1.25mm)

公称総ストローク:最大3.4mm

実測総ストローク:約3.1mm

測定フォースカーブ:

解説:最近販売されたGateron社のコスパ良好のスピードスイッチ。
   Cherry MX Speed Silverと比べてフォースカーブ全体がフラットになっているため、押し始めからスコンと入るような感触となっています。
   ステム(軸)にウォールがついているBOX形状タイプなので、押している間のブレも少なくなっています。
   キーを押しっぱなしにしていることも多いゲーム用途においては、BOX形状のステムがGoodだと思います。

購入先:

・遊舎工房

Gateron G Pro 3.0 Silvershop.yushakobo.jp

Gateron Box CJ Linear

入手性:♨♨

価格:116円/個

公称アクチエーションポイント:1.2mm ± 0.3mm

実測アクチエーションポイント:1.392mm(1.375mm、1.125mm、1.675mm)

公称総ストローク:3.4(+0 -0.4)mm

実測総ストローク:約3.3mm

測定フォースカーブ:

解説:Gateron社のBoxステム(軸)形状のスイッチ。
   特にスピードを謳っていないもののG Proと同じく1.2mmアクチエーションなので本記事に入れました。
   このスイッチはしばらく常用していたスイッチなので、少し個体差が大きく出た可能性があります。

購入先:

・遊舎工房

Gateron Box CJ Linear Switches - (35pcs)shop.yushakobo.jp

Kailh Super Speed Bronze

入手性:♨

価格:44円/個(or 66円/個)

公称アクチエーションポイント:1.1mm ± 0.3mm

実測アクチエーションポイント:1.333mm(1.25mm、1.25mm、1.5mm)

公称総ストローク:3.5(±0.3)mm

実測総ストローク:約3.8mm

測定フォースカーブ:

解説:本記事唯一のクリッキースイッチ。
   Kailh社のスイッチは超コスパ過ぎてビビりますね。
   クリック音はアクチエーションポイントを超えてからする(1.5mmくらい)なので、クリック音がしてすぐに止めても入力されないことがある、かもしれません。
   0.2くらいだから実質ないとは思いますが。

購入先:

・遊舎工房

Gateron Box CJ Linear Switches - (35pcs)shop.yushakobo.jp

Kailh Super Speed Silver

入手性:♨

価格:44円/個(or 66円/個)

公称アクチエーションポイント:1.1mm ± 0.3mm

実測アクチエーションポイント:1.417mm(1.375mm、1.375mm、1.5mm)

公称総ストローク:3.5(±0.3)mm

実測総ストローク:約3.5mm

測定フォースカーブ:

解説:超コスパのスイッチ。
   押し始めも軽く個体差も(3個テストでは)安定しているのが良いポイントですね。

購入先:

・遊舎工房

Kailh Super Speed Switch / Silver / Linearshop.yushakobo.jp

Kailh Super Speed Copper

入手性:♨

価格:44円/個(or 66円/個)

公称アクチエーションポイント:1.1mm ± 0.3mm

実測アクチエーションポイント:1.25mm(1.25mm、1.25mm、1.25mm)

公称総ストローク:3.5(±0.3)mm

実測総ストローク:約3.8mm

測定フォースカーブ:

解説:超コスパのタクタイルスイッチ。
   タクタイルの山が押し始めてすぐにあり、それを乗り越えたちょっと先にアクチエーションポイントがあります。
   ゲームにタクタイルスイッチって向いてるんですかね?
   ところでカッパーが銅、ブロンズが青銅みたいですね。

購入先:

・遊舎工房

Kailh Super Speed Switch / Copper / Tactileshop.yushakobo.jp

Durock Splash Brothers

入手性:♨

価格:49円/個(or 77円/個)

公称アクチエーションポイント:1mm

実測アクチエーションポイント:1.000mm(0.875mm、1.125mm、1.0mm)

公称総ストローク:3.5mm

実測総ストローク:約3.3mm

測定フォースカーブ:

解説:超コスパのリニアスイッチ。
   なんでこんなにコスパがいいスイッチが多いんでしょうね。
   BOX形状のステム(軸)なので押した状態でのグラつきも少ないですし、今回の記事の中で最もオススメなのがこのスイッチです。

購入先:

・遊舎工房

Durock Splash Brothersshop.yushakobo.jp

Speed Assassin

入手性:♨♨♨

価格:164.9(93.4+71.5)円/個

実測アクチエーションポイント(10個平均):0.52mm(0.625mm、0.625mm、0.375mm、0.625mm、0.5mm、0.5mm、0.625mm、0.375mm、0.5mm、0.375mm)※2個測定不能だったものは除外している

実測総ストローク:約2.5mm

測定フォースカーブ:

解説:2つのスイッチを組み合わせたカスタムスイッチです。
   私が勝手に命名しました。(広く普及している名前が既にあればコッソリ教えてください)
   アクチエーションポイントが0.5mmという超敏感なスイッチです。
   ゲーミング用途には珍しい、サイレントスイッチである部分も面白いポイントだと思います。
   とにかく速さを求めるクーガーの兄貴みたいな方は試してみてください。
   総ストロークももう少し短くしたいですね。
   ただ、敏感すぎて12個中2個が0.1~0.2mmくらいの敏感すぎる具合になってしまいました。
   作るときはピッタリの数ではなく、多めに材料を用意することをオススメします。

購入先:

・遊舎工房

Kailh Midnight Silent V2 Switch / Linearshop.yushakobo.jp

JWK Semi-Silent / Linear / 62gshop.yushakobo.jp

解説:なぜアクチエーションポイントが浅くなるか

2つのスイッチの静音性の作り方に理由があります。

Kailh Midnight Silent Linearはスイッチのハウジング(ケース部)の上下にシリコンパッドが貼り付けてあります。

JWK Semi-Silentは逆にステム(軸部)の上側にシリコンパッドが貼り付けてあります。

この組み合わせにより、アクチエーションポイントが近くなった、ということです。

これを見ると他のスイッチよりちょっとだけ引っ込んでいるのがわかると思います。

オマケ:Speed Assassin の余り

入手性:♨♨♨

価格:実質0円/個

実測アクチエーションポイント:3.625mm(オマケなので一つのみ)

実測総ストローク:5.0mm以上(測定不能

測定フォースカーブ:

解説:Speed Assassinを作った余りです。
   敏感すぎるSpeed Assassinのかわりに、とにかく鈍感になったスイッチです。
   5mm以上のストロークと、3.6mmの深いアクチエーションが面白いポイントです。
   逆になにかに使ってみたいですね。

購入先:

・遊舎工房

Kailh Midnight Silent V2 Switch / Linearshop.yushakobo.jp

JWK Semi-Silent / Linear / 62gshop.yushakobo.jp

まとめ

10個(実質9個)のスイッチを紹介しましたが、文章だけでまとめるのは難しいのでグラフにしてみました。

※アクチエーションポイントが短い順でソートしました

1個あたりのスイッチの安さ(コスパ)、という観点ではまた違った見方になります。

既製品としてはDurock Splash Brothersがアクチエーションポイントが短くコスパがいいスイッチと言えるでしょう。

カスタムスイッチが視野に入ってくるとSpeed Assassinなどのアクチエーションポイントが極端に短いスイッチが登場してきます。

ただし、カスタムスイッチは価格が高い上に分解・組み立ての手間がかかるので、60%キーボードのようなものにはオススメできないです。

レバーレスコントローラなどの20キー程度のものなら試してみても良いかもしれませんね。

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おわりに

久しぶりのスイッチの記事でしたが、いかがでしたでしょうか。

この記事はストリートファイター6を自前のレバーレスコントローラでやりたいために色々調べたものをまとめたものです。

皆さんのゲーミングキーボード選びの役に立てましたら幸いです。

 

このスイッチの話は継続して書いていこうと思います。

目標は月報的な感じです。

なにか書いてほしいスイッチがありましたら気軽にどうぞ!

 

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

本記事はNaked64SF v3 Proto3 + Black Lotusで書きました。