自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

Poker互換ケース「Bezel」の販売をするよ!

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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進捗報告記事でも上げていましたPoker互換ケースの販売を開始しますので、簡単に解説記事を書きたいと思います。

Poker互換ケースとは?

過去2回に渡ってビルドログを書きました、DZ60やGH60に代表されるキーボード基板を収めるケースのことをPoker互換ケースといいます。

なぜPoker互換ケースというかは過去の記事のこの部分を参照してください。

簡単にまとめると「Poker」というキーボードのケースの規格に互換したケースということですね。

Poker互換ケースに対応した基板はDZ60やGH60などの他にも実に数多く販売されています。

DZ60のビルドログは以下を参照してください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

salicylic-acid3.hatenablog.com

なんでPoker互換ケース作ったの?

DZ60のビルドログにDZ60のビルドログを書くに至った背景はDZ60 Rev3.0のビルドログに書いていますが、作って弄っているうちにPoker互換ケース、とりわけTofuケースに気になる点が多くあったためです。

それらを解消するように色々Tofuケースを改造した結果ものすごく打鍵感が良くなり、それらの改造点を最初から実装したPoker互換ケースを設計したいと思うようになりました。

動画だと分かりづらいかもしれませんが、この打鍵感は私が持つ他のハイエンドキーボードにも引けを取らないくらいいいですよ。

Poker互換ケースの問題点改善

上記動画のTofuケースに加えた改造ポイントを全て最初から備えるように設計しました。

真ん中ネジ受けを取り外し可能に

私の基本的な考え方として、できるだけキーごとの打鍵感の差は無い方が良いと思っています。

キーごとにキースイッチを変えるのは勿論いいんですが、せっかく同じスイッチ使ってるのに感触が違ったら嫌じゃないですか?

しかしながら通常のPoker互換ケースを使用しますと、このネジ受け周りのキー(GとHキー)の打鍵感だけが極端に固くなりますし、音も変わってしまいます。

Tofuケースの改造では小さいのこぎりで切り落としましたが、ちょっと勇気がいりますよね。

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そこでPoker互換ケースの最大の欠点(と勝手に思っている)の1つである真ん中のネジ受けを取り外せるようにしました。

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この部分は「Poker互換ですよ」と言うために取り付けられるようにしただけなので、できるだけ取り付けないで欲しいです。 

底の余分な凹凸をオミット

既存のPoker互換ケースはバッテリー関連や小基板への配線用の溝などでケースの底はフラットになっていませんでした。

また、オリジナルのPokerキーボードのDIPスイッチ用の穴(リセットスイッチ用の穴ではない)を使用しないPCBやVIAの普及などもあり、底はフラットにしても支障がない状況となりました。

溝などがあると打鍵音がそこで抜けたり反響してしまうので、冒頭のTofuケースの改造の際は凹んだ部分に鉄のウェイトを仕込みました。

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Bezelにウェイトを仕込むといよいよ持ち上がらなくなってしまいますので、フラットにだけしました。

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この改善のおかげでどのキーを押しても反響することはなくなりました。

USBコネクタ用の穴の改善

私が試したPoker互換ケース3種はDZ60やWT60のUSBコネクタと微妙に位置が合って無く、ケース側を削る必要がありました。

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この部分は理想を言うならコネクタピッタリの穴にするべきですが、互換ケースなので誤差を考慮して横長のスリットにするべきです。

しかし、穴を広げるとケース内から音が抜けてしまいます。

そのためケーブルだけが通るバックパネルを別途用意することで、コネクタの互換性を保つための横長のスリットと隙間の排除を両立することができました。

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ケーブルの抜けを防止したい場合は、ケーブルコネクタ部分に何かを巻いて抜けにくくするとより使いやすくなります。

ケースデザインのこだわり

デザイン

このBezelケースを見た第一印象としては、キーが配置されていない「余白」がとても大きい、というものではないでしょうか。

このケースの名前の通り、Bezel(額縁・枠)というコンセプトで設計しています。

絵画を飾るとき、そのまま壁に画鋲で留める人はあまりいないでしょう。

サイズがあっていない狭い額縁に飾っては絵画の魅力も落ちてしまいますし、絵画の邪魔をするほど豪奢な装飾の額縁は絵画から視線を奪ってしまいます。

色とりどりのキーキャップはキーボードにおいて最も拘れるポイントの1つですし、キーボード全体の印象を決定づける花ともいえます。

この余白の大きいケースは机に置いた時、名脇役としてキーキャップをより映えるように引き立てる事ができます。

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形状

上下左右の余白を多くとるに辺り、手前部分の余白量が課題でした。

大きすぎると親指の付け根に干渉しますし、パームレスト必須にすると使いづらいです。

そこで、かつてCherry社が販売していたG80-3000というキーボードにインスピレーションを得て手前側に傾斜を付けることにしました。

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このおかげで左右下に20mmの余白を、上に30mmの余白を設定することができました。

バックパネル

私はキーボードを自分好みにカスタマイズするのが好きです。

ケースの色に合わせてキーキャップを選ぶことから始めていくこの工程は、どれだけキーボードを組み立てても楽しいものです。

しかし、数千円から数万円もするケース側に手を加えることは心理的ハードルが高いと思います。

そこで、バックパネルをはめる前にマスキングテープを貼ることを提案したいと思います。

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後ろ側ですからあまり目立ちませんが、自分だけが知っているオシャレって結構格好いいかなと思います。

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ライトグレーはマットクリア(左)をブラックはスモーク(中)をベージュはマットオパール(右)を付属します。

塗装

このケースではカスタムキーボードで採用例が多いアルマイト加工でもE-Coat(電着塗装)でもなく、粉体塗装という方法で塗装されています。

粉体塗装は量産効率という点では前述の塗装方法より劣りますが、発色の良さと耐久性の高さ、厚塗りができるという点で優れます。

Bezelケースではベージュ、ライトグレー、ブラックの3種のカラーを用意しました。

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※本当はダークグレーを用意したかったのですが、工場とのコミュニケーション上の問題でライトグレーに変わってしまいました。

 ダークグレーをお待ちだった方は大変申し訳ありません。

課題と対応、そして購入にあたっての注意

重すぎることでの運搬時の傷

ほぼ2kg近い重量物が30個運ばれてきたわけですが、箱の内部でぶつかりあって傷がついていました。

これらは選別して(15個/30個)、再度工場で再塗装を行っていますが、裏側の小さな傷などのは受け入れざるを得なかった状況があります。

購入の際は以下のような傷にはご容赦ください。

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塗装ムラ

ケースを吊るしてガンで粉体を吹き付けて塗装するという工程上、どうしてもフックで吊った部分や、塗装時にネジ穴が潰れないようにネジを挿していた部分には塗料が乗りません。

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ちなみにE-Coatは重すぎる&傷が不可避&部分再塗装が不可のために断られました。

大きなムラは傷と同様に選別し、再度工場で再塗装を行っていますが、プレートやPCBを装着した部分にできるムラなどは販売価格を考え、QCを通過させていますのでご容赦ください。

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また、ブラックにおいては塗装後の研磨は行っていないために、塗装表面は完全には平滑にはなっていません。

パッと見はピアノのツヤツヤな黒をイメージするかもしれませんが、近くで見るとイメージと違う場合がありますのでご注意ください。

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再販はよほどのことがない限りしません

家に在庫を置くにも大きすぎ&重すぎますし、原価が高すぎるために継続しての販売は難しいです。

今回の販売分が終了した後の再生産はあまり考えておりません。

ちなみに販売したいという奇特な人がいればケースデータを公開しようとは思っています。

写真

ベージュ

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ライトグレー

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ブラック

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打鍵動画

※これはダークグレーでラインナップにない色です。

※最初のプロトタイプでブラックアルマイトでラインナップにない色です。

販売

Boothのサイトで販売を開始します。

販売開始は2021/7/7(水)12:00です。

salicylic-acid3.booth.pm

おわりに

最近仕事と記事連載に追われて販売の方が疎かになっていましたが、このBezelの販売を早くしたいと思い、色々頑張りました。

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

この記事はNaked64SF v3 Proto2で書きました。