自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

自作キーボード最大の特徴「レイヤー」の解説

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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過去の記事を見返していたら自作キーボードの最大の特徴であるレイヤー機能についての説明が足りていない気がしました。

レイヤー機能があるおかげで極端にキーが少ないキーボードも普通に使えるのですが、外から見ていると不思議でしょうがないと思います。

本記事ではそんなレイヤー機能のメリットと使い方についてじっくりと解説したいと思います。

レイヤー機能とは

レイヤーとは「階層」「層」の意味の通り、通常のキーレイアウトの上にかぶせるキーレイアウト層のことです。

聞き慣れない単語のようですが、ノートパソコンやコンパクトなキーボードを利用している人の大部分は触ったことがあると思います。

そうです、ファンクションキー(Fnキー)です。

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Fnキーは押している間、他のキーの効果が変化します。

例えば私が使うSuface ProはFnキーを押すと最上段のキーがF1~F12キーになったり輝度調整キーやプリントスクリーンキーになったりします。

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このFnキーを拡張した機能がレイヤー機能です。

Fnキーの問題

ノートパソコンユーザにとって、Fnキーはあまり歓迎されていないように思います。

それは狭いキーボードスペースに如何にキーを押し込むかということに腐心しているキーレイアウトが多いからです。

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キーボードを置く場所さえあればキーは全て独立していたほうが使いやすい(偏見)

Fnキーを特徴とするキーボード

一方、別体となっているキーボードには使いやすいFnキーを特徴とするものがあります。

自分にあったキーボードを探そうとしている人なら一回は目にしたことがあると思います、PFUのハッピーハッキングキーボード(以下HHKB)とFILCOのMINILAです。

この2つのキーボードはコンパクトながらFnキーの位置が特徴的です。

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HHKBのFnキーの位置(画像はPFU公式サイトから引用)

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HHKBのFnキー押下時のキーマップ(画像はPFU公式サイトから引用)

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MINIRA-RのFnキーの位置(ダイヤテック公式サイトから引用)

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MINIRA-RのFnキー押下時のキーマップ(ダイヤテック公式サイトの画像を加工)

自作キーボードのレイヤー機能

さて、オタク特有の話が長くなるやつをやってしまいましたが、ようやく本題です。

レイヤー機能は自作キーボードの最も特徴的な機能と私は考えています。

前述のFnキーと違うを列挙すると大きく3点あります。

1.レイヤーキーを自由に割り当てることができる

2.レイヤーを何個でもユニークに設定することができる

3.レイヤーキーを他のキーと重畳して割り当てることができる

これだけだと分かりにくいので、一つずつ解説していきます。

しゃらくせえメリットだけ教えろ、という人は少しジャンプしてメリットの部分から参照ください。

1.レイヤーキーを自由に割り当てることができる

これは分かりやすい部分だと思います。

自作キーボードにおいては全てのキーにレイヤーキーを割り当てることができます。

自分の使い方や手の動きにあったキーにレイヤー機能を割り当てることで、手の形を崩すことなく打ちやすい場所のキーにレイヤー機能を割り当てて使用することができます。

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7sKBにおける筆者のキーマップ。赤丸がレイヤーキー。

2.レイヤーキーを何個でもユニークに設定することができる

自作キーボードを眺めていると、これは文字入力ができるんだろうか?と不安になるキー数のキーボードが目につくと思います。

このようなキーボードはレイヤーを複数重ね、同じキーに異なる役割を持たせることで押せるキーの種類を増やしているのです。

これがレイヤーキーがレイヤー(層、階層)と呼ばれる最大の理由です。

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レイヤー1:記号、テンキーレイヤー

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レイヤー2:ファンクションキー、アローレイヤー

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レイヤー3:HHKBライクレイヤー

上記例では1枚目のレイヤーは記号やテンキーを、2枚目のレイヤーはファンクションキーやアローキーを、3枚目のレイヤーではHHKBのようにマウスからの持ち替えがしやすい右側にアローキーレイヤーを割り当てています。

3.レイヤーキーを他のキーと重畳して割り当てることができる

Fnキーでは他のキーの役割を変化させるだけで、Fnキーをどれだけ押しても何も入力されませんでした。

上記1.2.の特徴を活用して押しやすい場所に複数のレイヤーキーを配置しても、単体で押して何の入力もされないのでは、せっかく打ちやすくても勿体ないです。

そこで、他の機能と重畳(相乗り)させます。

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上記の例ではエンターキーとスペースキーをレイヤー機能と重畳しています。

単体で押すとスペースキーやエンターキーとして認識し、長押しにするとレイヤー機能が動作します。

こうすることで最も打ちやすい場所にレイヤーキーを配置してもタイピングの邪魔にならないのです。

レイヤー機能のメリット

自作キーボードにおけるレイヤー機能の最大の特徴を一言にまとめると「レイヤーを好きなだけ、好きな場所に、他のキーと重畳して設定する」ことです。

この特徴を活用したときの最大のメリットは「指を大きく動かさなくても全てのキーを打鍵可能」なので疲労を軽減できるということです。

打鍵による疲労の最大の原因は手を大きく動かすこと

人がキーボードを使う時、最も疲れる動作は手を大きく動かすことです。

具体的に言うとホームポジションから2キー以上離れているキーに手首を浮かせて指を伸ばす時、疲労が蓄積されます。

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アローキーやバックスペースキーなどはよく使いますが、ホームポジションから大きく手を動かさないといけないので結構疲れます。

もちろんそれにはマウス操作も含まれます。

テンキー付きのフルキーボードであればマウスは月くらい遠いです。(大げさ)

よく押すキーは近ければ近いほどいいですし、マウスは近ければ近いほどいいです。

レイヤー機能を活用する

よく押すキーを近づけるために、レイヤー機能を活用します。

具体的に言うと、記号キーやファンクションキー、アローキーやテンキーなどを全てホームポジションに近いキーのレイヤーに押し込んでしまいます。

英語のフルキーボードは104キーですし、日本語のフルキーボードは108キーか109キーです。

単純に計算すると、デフォルト+2層のレイヤーがあれば最低でも36キーあれば足りる計算です。

ちなみに、ホームポジションから1キー以内+親指キー片側3キーで42キーで、レイヤーを2層用意すれば126キー分の割り当てが可能です。

ね?余裕でしょう?

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ホームポジションから1キー以内を抽出した図。おや、どこかで見たような…

最大のデメリットは学習コスト

理論的に可能なのは分かったけど、覚えるのが難しそう。

ここまで読んでも、そう思う方は多いと思います。

そりゃあそうです、今まで慣れてきたものから全く異質なものに変えるのですから。

そういう人はレイヤーを使わなくてもギリ使えそうな65%前後*1のキーボードを選び、よく使うキーから徐々にレイヤーにキーを入れていきましょう。

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例えばアローキーは、左右のどちらに欲しいですか?

その時、どのキーを押しながらだと操作しやすいですか?

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私の場合は右手カーソルキーを操作し、親指のキーを押しながらだと操作がしやすい

次に記号キーです。

あなたがよく使う記号は何でしょうか?

小説を書いていた私は、「」と!?でした。

また、仕事でよく使うキーとしては()と:、~でした。

これらのキーを覚えやすい場所に配置していきます。

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私の場合は記号は左手、テンキーは右手で操作するのがしっくり来る

※常々思うのですが、デフォルトの配置だと()と「」の位置がズレてて違和感ありませんか?

 日本語キーボードに至っては()と「」の並ぶ方向が違うことが不思議でしょうがないです。

この調子でファンクションキーとテンキーのレイヤを作成します。

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F1キーは誤爆してイラッとすることが多いので、ファンクションキーレイヤーからは除外

違和感を覚えたらササッと変更してみましょう。

自作キーボードでは記号の位置などの問題に、無理に我慢する必要はありません。

自分が合理的だと思う場所にキーを配置して、すぐに実際に試してを繰り返してキーマップを詰めていきましょう。

今はVIAというツールが用意されていて、対応しているキーボードならキーマップ書き換えも簡単になっています。

salicylic-acid3.hatenablog.com

私が初心者におすすめするのは60%~75%キーボード

最後に私が初心者の方におすすめするキーボードを紹介しておきます。

先の学習コストの項目でも触れましたが、私のオススメは65%*2前後のキーボードです。

これは移行中の効率を落とさないための措置です。

60%以上*3のキーボードでもレイヤー機能を駆使してどんどん効率化を図り、結局50キーくらいのキーで満足できる、というところに至ってから40%*4に挑戦しても遅くないと思うからです。

もちろんいきなり40%*5に挑戦し、養成ギブスのように使いこなすまで頑張るという方も否定しません。

私も42キーのCorneを自宅用、職場用に揃えてから自作キーボードに挑戦しましたが、概ね1ヶ月くらいで完全に慣れることができました。

初心者にオススメキーボード

本記事内で何度か触れていますが、私は65%前後*6のキーボードがおすすめしています。

手前味噌枠(これらは初心者にオススメするために作ったので、多少はね?)

7sPro

HHKBのレイアウトにインスパイアを受けた配置と、できる限りはんだ付けの箇所を減らした構造が特徴の分割キーボード。

HHKBに慣れているなら移行は容易と思います。

7sProshop.yushakobo.jp

JISplit89

日本で最も使われている日本語レイアウトを踏襲した75%*7分割型キーボード。

7sProと同じく、できる限りはんだ付けの箇所を減らした構造と、自作キーボードとしては大柄だが、普通のキーボードとしては小柄というちょうどいいサイズ。

分割位置(特にYキーBキー)にさえ慣れればすぐに実戦投入可能です。

JISplit89shop.yushakobo.jp

ErgoArrows

ErgoDox系列のカラムスタッガードレイアウトを採用した分割型キーボード。

スイッチソケットに非対応ではあるが、その分価格を抑えているのではんだ付けが苦ではない人にオススメ。

名前にあるように背が低いアローキーが両手にあることを最大の特徴とし、左手でカーソルを操作できる。

また、慣れるまでの違和感のもとになるYキーBキーを両手に備えているのですぐに実戦投入可能です。

ErgoArrowsshop.yushakobo.jp

私以外の方が設計したキーボード

Mint60

言わずとしれた人気60%*8キーボード。

スタンダードな配列、アクリルを多用したおしゃれな外見から最初の一台に選ばれることが多い。

スイッチとキーキャップがセットにされたスターターセットが用意されており、どのスイッチやキーキャップを選んでいいかわからない人もスムーズに購入できる点もオススメポイント。

Mint60スターターセットlilakey.com

Tartan

世界的に人気を博した40%*9キーボードのPlaidの60%*10横ずれレイアウトの一体型キーボード。

全ての部品がスルーホール部品(差し込んで裏からはんだ付けする部品)で構成されているため、初心者でも安心して組み立てることができる。

組み立てた後も電子部品が整然と並んでいる姿は、どこか新しく感じてとても格好いいです。(主観)

yushakobo.jp

他のキーボードは自作キーボードカタログで確認してみよう(宣伝)

(ダウンロード版)自作キーボードカタログ 2020

2020/10/31現在、56種のキーボードを掲載。(5回のキーボードの追加のためのバージョンアップを実施)

booth.pm

※どちらも同じものです。更新頻度も全て同じです。

(製本版)自作キーボードカタログ 2020

2020/10/31現在、46種のキーボードを掲載。

A4サイズフルカラーの上質紙を使用している(カタログというよりムック本)ため、手にとって見たい方に最適です。

booth.pm

自作キーボードカタログ 2020shop.yushakobo.jp

おわりに

自作キーボードの最大の特徴であるレイヤー機能についてできる限り詳しく解説してみましたが、いかがでしたでしょうか。

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

salicylic-acid3.hatenablog.com

この記事は7sProで書きました。 

*1:フルキーボードからテンキー、ファンクションキーを削り、カーソルキーが左側に寄ったレイアウト

*2:フルキーボードからテンキー、ファンクションキーを削り、カーソルキーが左側に寄ったレイアウト

*3:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキーを削ったレイアウト。HHKBやMINIRA-Rが該当

*4:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキー、数字キーを削ったレイアウト

*5:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキー、数字キーを削ったレイアウト

*6:フルキーボードからテンキー、ファンクションキーを削り、カーソルキーが左側に寄ったレイアウト

*7:フルキーボードからテンキーを削り、カーソルキーが左側に寄ったレイアウト

*8:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキーを削ったレイアウト。HHKBやMINIRA-Rが該当

*9:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキー、数字キーを削ったレイアウト

*10:フルキーボードからテンキー、ファンクションキー、カーソルキーを削ったレイアウト。HHKBやMINIRA-Rが該当