自作キーボード温泉街の歩き方

自作キーボードの世界は温泉に例えられます。自作キーボードの温泉街の楽しい歩き方を紹介します。

自作キーボードキット『7Nano』ビルドガイド

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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今回は私の設計した自作キーボードキット『7Nano(ナナナノ)』の組み立て手順書、ビルドガイドを書きたいと思います。

はじめに

キットをお買い上げ頂いた方、お買い上げありがとうございます。

拙い部分もあると思いますが一所懸命にガイドしますのでよろしくお願いします。

前置き

本キットは3Dプリントによるケースを前提とした7キーマクロパッドです。

Xiaoという小さいマイコンを採用し、PRK Firmwareに対応しています。

本キットを組み立てる前にビルドガイドを熟読してください。

皆様も分からないところがあったら「やってから考える」のではなく、「先に」私まで問い合わせて、疑問を解消させてから取り組んでください。

製品についてのお問い合わせは私のDiscordまでどうぞ。

紹介記事は以下にありますので、更に知りたい方はこちらも見てみてください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

注意事項

本キットは自分で自分で組み立てるキットです。

私が組み立ての代行を引き受けることはありませんのでご了承ください。

キットの中身を確認する

内容物一覧

品目 数量
ケース 1
基板 1
スタビライザー 1
スイッチソケット 7
ダイオード 1
LED 3
Xiao RP2040 1
アクリルパネル 1
ゴム足 4
結束バンド 1

万が一部品が足らない場合、お手数ですが以下の方法でご連絡ください。

購入先が遊舎工房様の場合:遊舎工房のお問い合わせページから連絡をいただけましたら発送対応いたします。

購入先が私のBoothショップの場合:Boothのメッセージ、TwitterのDM、本記事のコメント欄(公開されません)にメールアドレスをいただけましたら発送対応いたします。

ケース

基板を納め、スイッチをはめるケースです。

本ガイド内では『ケース』と呼びます。

黒と白がデフォルト色で限定色として透明・半透明がありますが、今後作るかは分かりません。

基板

本ガイド内では『基板』と呼びます。

組み立ての半分は基板への部品のハンダ付けです。

スタビライザー

本ガイド内では『スタビライザー』と呼びます。

長いキーをブレなくまっすぐ押せるように使用しますが、好みによっては使用しなくても大丈夫です。

スイッチソケット

本ガイド内では『スイッチソケット』と呼びます。

スイッチを導通させるために必要です。

テープに入っていますので、取り出して使用してください。

ダイオード


本ガイド内では『ダイオード』と呼びます。

LEDを光らせるために必要です。

LED

本ガイド内では『LED』と呼びます。

本キーボードを光らせるために必要ですが、ケースが黒だとほとんど光りません。

Xiao RP2040

本ガイド内では『Xiao RP2040』と呼びます。

本キーボードの頭脳となるマイコンです。

アクリルパネル

本ガイド内では『アクリルパネル』と呼びます。

裏蓋となるアクリル製のパネルです。

ネジ

本ガイド内では『ネジ』と呼びます。

基板とプレートをネジ止めするのに必要です。

3Dプリンタ等の樹脂用のタッピングネジを同梱しています。

普通のネジは使用できないのでご注意ください。

ゴム足

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本ガイド内では『ゴム足』と呼びます。

シートについたゴム足が4個入っていますので確認してください。

結束バンド

本ガイド内では『結束バンド』と呼びます。

ケーブルが抜けないように使用します。

キット外で必要なもの

一覧

品目 数量
キースイッチ 7
キーキャップ 7
USBケーブル 1

キースイッチ

本ガイド内では『キースイッチ』と呼びます。

7NanoはCherryMX互換スイッチに対応しています。

7個必要です。

Switchesshop.yushakobo.jp

キーキャップ

本ガイド内では『キーキャップ』と呼びます。

7Nanoは1uキーが4個、1.25uが2個、2uが1個必要です。

Cherryプロファイルなどキーキャップセットでは揃いませんので、DSAなどの全ての行の形状が同じキーキャップセットを使用するか、バラ売りのものを使用するといいでしょう。

Keycapsshop.yushakobo.jp

プロファイルについてピンとこない方は以下の記事も参照してみてください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

USBケーブル

本ガイド内では『USBケーブル』と呼びます。

7NanoとPCとをつなぐために必要です。

Xiao RP2040はUSB Type-Cケーブルが必要です。

必要工具

工具それぞれの説明はこちらの記事に書かれていますので参照してください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

組み立て

いよいよ組み立てです。

まとまった時間は用意できましたか?

本キットには取り付け順序があります。

工程によって、取り付けられなくなるパーツがありますので、十分注意してください。

(オプション)ダイオードをハンダ付けする

LEDを取り付ける場合はダイオードからハンダ付けします。

ダイオードには向きがあり、肉眼では見づらいかもしれませんが、表面に印刷があります。

線が書いてある方を基板の裏の矢印の先に合わせてつけます。

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ダイオードの線が見辛いときはライトで照らすか虫眼鏡で確認してください。

逆向きに取り付けるとLEDは発光しません。

まず、ダイオードを取り付けるところにあらかじめはんだを盛っておきます。(これを予備ハンダといいます)

ハンダこての温度は320℃に設定してください。

量は下の写真くらいで大丈夫です。

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※写真はNaked48LEDのものです。

ハンダの量が多すぎたり、ハンダが尖ってしまったら(ツノがたったといいます)吸い取り線で一回吸い取ってからもう一度盛ります。

吸い取り線は新しい銅色の部分を吸い取りたい部分に当て、上からハンダこてを当てて吸い取ります。

吸い取り線の吸い取って銀色になった部分はもう使えませんので、ニッパーで切り取ってしまいます。

また、何度やっても尖ってしまう場合、長く温めすぎてフラックスが飛んでしまった可能性があります。

一度つけるパッドにフラックスを一塗りしてからやってみてください。

ダイオードのハンダ付けをする前に、もう一度向きが合っているかを確認します。

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ピンセットでダイオードをつまみ、予備はんだの上に置きながら予備はんだをハンダこてで溶かす事ではんだ付けします。

ハンダこてを放してから一秒置いてピンセットを放します。

横から見て、ダイオードが浮いていないか確認します。f:id:Salicylic_acid3:20190315030833j:image

一見ハンダが付いていても浮いていると、割とすぐに剥がれてしまいます。

浮いている場合、フラックスを塗ってから浮いている側のはんだを暖め直し、ピンセットで位置を調整してください。

すべて片足だけ付け終わったら、今度は反対側です。

ハンダこてで一秒暖めてからはんだを送ります。

(オプション)LED(SK6812MINI-E)の取り付け

このSK6812MINI-EというチップLEDの4つの足は一つだけ斜めに切り欠きがあり、それがGNDです。

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切り欠きをGNDに合わせてLED発光部分が裏側に来るように穴に嵌め込みます。

穴は結構ぴったりめに作ってありますので嵌めづらいかもしれませんが、足がパッドにちゃんと付くようにはめ、LEDの足をはんだ付けします。

従来のLED(SK6812MINI)に比べて熱に耐性がありますが、270℃~320℃で一本ずつゆっくりはんだ付けします。

スイッチソケットはんだ付け

スイッチソケットをはんだ付けします。

シルクに合うようにソケットを置き、片足を少量のハンダで仮止めします。

浮きがないことを確認したら反対側に十分なハンダを流し込み、仮止めした方も忘れずにハンダを足します。

Xiao RP2040の取り付け

ピンヘッダを差し込み、Xiao RP2040をその上から差し込みます。

この時、マイコンを取り付けるソケットのハンダ付けがキチンとなされているか、再度確認してください。

ピンヘッダは長い方と短いほうがありますが、短い方を基板側に差し込んでください。

マイコンを差し込みます。

裏返して基板側をハンダ付けします。

Xiao RP2040側はピンヘッダをニッパーでカットしてハンダ付けします。

ファームウェアを書き込んでテストをする

基本的にPRK Firmwareのチュートリアルに記載されていますが、ここでは抜粋して紹介します。

まず、PRK Firmwareをダウンロードします。

github.com

Bootボタンを押しながらUSBケーブルを差し込むと、フラッシュメモリとして認識しますので、ダウンロードしたファームウェアを配置します。

上手く配置できると一旦マウントが解除されて「PRK Firmware」というフラッシュメモリとして再認識されます。

その後、PRK Firmwareとして認識されたフラッシュメモリの中に以下のファイルを配置します。

drive.google.com

書き込みが成功するとLEDが発光してキーが入力できるようになるので、仮にスイッチを差し込んで入力テストをしてください。

(オプション)スタビライザーを潤滑する

スタビライザーの取り付けの前に、ルブの一手間を加えることで静粛で上質なキーボードになります。

ルブの方法は以下の記事を参考にしてください。

salicylic-acid3.hatenablog.com

スタビライザーを取り付ける

表面(温泉マークがある面)にスタビライザーを取り付けます。

スクリューインタイプのスタビライザーの場合、裏面からネジ止めする必要がありますので忘れずに。

クリップオンタイプのスタビライザーの場合、パチっと最後まで押し込んでください。

クリップオンタイプのスタビライザーが固くて取り付けられない場合、クリップ部分をあらかじめペンチで軽く潰しておくと簡単に入ります。

基板をケースにはめ、スイッチを取り付ける

スイッチの足が曲がっていないことを確認してからスイッチプレートに差し込んでいきます。

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スイッチの足が少しでも曲がっていると(1枚目)スイッチプレートに差し込んだ時にクシャクシャになってしまう(2枚目)場合があります

なお、一度でも足がクシャクシャになってしまったスイッチ、はんだ付けしたことがあるスイッチはスイッチソケットには差し込まないでください。

スイッチソケットの中の金具が変形し、スイッチを押しても反応しなくなる可能性があります。

スイッチの取り付け方は以下の動画を参考にしてください。

基板の裏面からスイッチの足を確認する

基板の裏面のソケットの隙間からスイッチの足が間違いなく刺さっていることを確認します。

下の写真のように斜めから見ると分かりやすいです。

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もう一度キー入力をテストする

ネジ止めする前に念のためテストをします。

基板をケースにネジ止めする

以下写真の2箇所をネジ止めします。

タッピングネジなので少し硬いですが、奥までねじ込みます。

あまり強くするとネジ穴が壊れてしまいますので、奥までねじ込んでなお強く回しすぎないように注意してください。

ケーブルを差し込み、結束バンドで抜けないように固定する

ケーブルを差し込み、ピンと張らない程度の余裕を持った長さで結束バンドを締めます。

結束バンドを締め、動かないことを確認したら余った部分をニッパーで切り取ります。

アクリルパネルをネジ止めする

アクリルパネルの四隅をネジ止めします。

ゴム足を貼り付ける

アクリルパネルの四隅にゴム足を貼り付けます。

キーキャップを取り付ける

自分の求めるキーマップに応じた配置でキーキャップを取り付けます。

キーマップをカスタマイズする

PRK Firmwareのキーコードページを参照し、keymap.rbを編集します。

github.com

完成!

お疲れ様でした!

達成感とともに、ゆっくりと自作キーボード温泉に浸かってください。 

また、出来上がったキーボードの写真を私に見せていただけると大変嬉しいので、是非私のDiscordにいらっしゃって写真だけでも貼っていってください!

注意事項

3Dプリンタ(レジン)によって製造されたケースであるため、日光によって劣化・変色します。

特に白色と透明のケースは黄変しやすいので、直射日光が長時間当たる場所に置いて使用しないでください。

また、クリア系の塗装を行うことで黄変しにくくなります。

動かない時に

以下のサイトがトラブルシューティングについて網羅していますので参考にしてください。

scrapbox.io

おわりに

ビルドガイドはいかがでしたでしょうか。

分かりやすかったでしょうか。

なるべく組み立てやすい様に設計したつもりですが、なにかわからないことが有れば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

出来上がったキーボードの写真を見せていただけるだけで大変嬉しいので、是非いらっしゃって写真だけでも貼っていってください!

salicylic-acid3.hatenablog.com

本記事はNaked64SF v3 Proto3で書きました。