自作キーボード温泉街の歩き方

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「GL516互換PCB設計」コンテストのまとめと発表をするよ!

こんにちは。自キ温泉ガイドのサリチル酸です。

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GL516互換PCB設計コンテストのまとめとプレゼント対象者の発表をしたいと思います。

GL516レイアウトコンテストとは違い、実際に設計した人を対象にするコンテストのため、対象者が少ないような気がしていましたが、思ったより参加いただけまして大変うれしかったです。

ありがとうございました!

GL516互換PCB設計コンテストとは

salicylic-acid3.hatenablog.com

私が設計した65%汎用ケースであるGL516で使用できる互換PCBを設計してみよう!という企画です。

こちらもGL516レイアウトコンテストと同様に、GL516互換PCBのレビュー依頼をしていただいた方の中から私が「欲しい!」という互換PCBを考案された方にGL516ケースをプレゼントさせていただきます。

※上手く配線できた方とか、指摘事項が少ない方を選ぶ訳ではないです。
 最初から上手くやろうとするととても心理的ハードルが高くなるものですから、そういうものを気にせず気軽にレビュー依頼をしていただきたいのです。

プレゼント対象者は記事の最後で発表します。

よくあった指摘事項

GL516レイアウトコンテストと違い、こちらの記事ではよくある指摘事項をまとめたいと思います。

かといって以後同様のミスは無いようにして欲しい、という意図は有りません。

今後も気軽に相談とレビュー依頼をしてくださると嬉しいです。

リセットスイッチの場所について

GL516はボトムプレートを取り外してリセットスイッチにアクセスする想定となっています。

よって、ボトムプレートが来る部分にしかリセットスイッチを設置出来ないのですが、ドキュメントに設置場所についての言及がなかったので、デザインガイドの方を修正しました。

リセットスイッチは以下の図のようにBLE Micro Pro用のフットプリント同様に、所定の範囲に設置する必要があります。

ソケットのパッドにビアを打つ

これは異論もあると思いますが、私個人的には非推奨としています。

理由はビアに少なからずハンダを吸われますし、フラックスは貫通して机を汚してしまうこともあります

特にハンダを吸われることについてはPCBAを発注する際には大きな問題※になりやすいので、レビュー時に見かけたら指摘するようにしています。

※ソケットはハンダの接合力で基板にくっついていますが、ソケットの接合に関わるハンダの量が少なくなると剥がれやすくなるためです。
 パッド自体の耐久性はビアによって上がってパッド自体は剥がれにくくなることもありますが、そもそもソケットが剥がれることが問題かと思いますので、非推奨としています。

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他のパッドの近くにビアを打つ

ビアという基板の表裏を行き来するための穴は通常レジストによって絶縁されていますが、まれにレジスト(基板表面に塗る絶縁塗料)が薄くなっている場合があります。

そのため他のパッドの近くに配置してしまうとハンダ付けの際にショートしてしまう可能性がありますので、少しだけでも離したほうが安全です。

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ダイオードのスルーホールと表面実装用パッド、どちらに配線するか

キーマトリクスを配線していく際、ダイオードのスルーホールと表面実装用パッドのどちらに配線するか、という問題です。

これも異論があると思いますが、私はスルーホールに配線し、そこから表面実装用のパッドに分岐させるようにしています。

これは表面実装用のパッドのほうが剥がしやすいからで、スルーホールの方を予備として使用できるようにそのような順での配線を推奨しています。

※下図左側の例だと表面実装用のパッドが剥がれたら、スルーホールの方を使ってもキーは反応しなくなってしまいます。

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基板とスイッチプレートのスタビライザーの向きが異なる

本当によくありますので、フットプリント側に何らかの修正を考えているところです。

スイッチプレート用のスタビライザーの穴(下左図)、及び基板用の2uキースイッチ用の穴(下右図)はよく見ると上下のどちらかにオフセットしています。

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これらがオフセットしている(寄っている)側にスタビライザーのワイヤーが通るので、向きを合わせる必要があります。

スイッチプレート用のスタビライザーの穴を上下に広げてどちらの向きでも対応できるようにしちゃっても良いんですが、私はそういう冗長な穴が嫌いなので、他の方法を考えています。

スタビライザーのワイヤーに干渉する位置にスルーホールダイオードを設置する

これもよくありますので、フットプリント側に何らかの修正を考えています。

スタビライザーのバーが通る場所にスルーホールダイオードを設置してしまうと、スタビライザーのバーとハンダ付けした部分が干渉してしまう可能性があります。

最悪ショートの原因となり、意図していないキーが反応してしまう場合がありますので、バーが通る位置にはスルーホールダイオードの設置は避けた方が良いです。

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直角に配線する

これも非推奨レベルで、確実に影響が出るわけでは有りませんが、レビュー時には一応コメントしています。

直角配線を避けるべき理由は製造工程にあります。

PCBは銅箔が両面に一面に貼り付けられた生基板に「残す部分」だけ耐腐食性の塗装をプリントして、銅箔を溶かすエッチング液を吹きかけます。

その際に直角の部分があるとエッチング液がその部分に表面張力で溜まってしまい、余分に銅箔層を侵してしまいます。

そうすると意図したものより細い配線となってしまい、断線リスクが上がってしまいます。

信号線の場合はノイズの発生源にもなるので、やはりできれば避けるべき事項となっています。

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LEDの電源線の配線ルールについて

LEDの電源線は最初に引くように書いているだけ有って様々な順番で引いている基板を見ます。 

一例ですが、格子状に並んでいるLEDの場合、まず左右端に配線を引いてから横に伸ばしていくことでVCCとGNDの干渉を避けて配線することが出来ます。

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LEDインジケータを使用する場合、スイッチプレートに工夫をしないと表面から見えない

LEDの発光により何らかの情報を表示するインジケータを設置する場合、スイッチプレートに何らかの工夫を施さないとキーボード上面から光を見ることが出来ません。

特にインジケータとしての用途の場合、下図の様に穴を開けることを推奨します。

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下図のN51GLの様に、銅箔を抜いて光を透過させようとする場合、基板のレジスト色によっては見えない色が出てきてしまいます。

例)青い基板だと赤いインジケータが見れない、等

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CherryMXスイッチ用のPCBに、一部Chocスイッチを入れる

工夫が必要であるため、基本的には非推奨です。

これはスイッチプレートと基板間のクリアランスが異なるためです。

MXスイッチの場合、スイッチプレートと基板の間は3.5mmのクリアランスとなっていますが、Chocスイッチの場合は1mmです。

つまり1つのスイッチプレートと基板に2つのタイプのスイッチを混在させると、Chocスイッチの方が2.5mm浮いてしまうのです。

この問題に対する解決策としては、全てのスイッチをChocスイッチとの両対応とするか、プレートを分割するかの2択となります。

全てのスイッチをChocスイッチに対応させると問題になるのがProMicroが裏にある部分ですが、ピンヘッダのクリアランスの問題で共存するのは非常に難しいので、ソケット非対応にするかキーをオミットするかの割り切りが必要となります。

スイッチプレートの分割ですが、GL516のスイッチプレートの左右端でネジ止めする方式ですと、プレートを分割すると強度的に弱くなってしまうため、これも推奨できません。

GL516ケースプレゼント対象者発表

というわけで多少まとめて合計62レイアウトの応募ありがとうございました。

すごく気に入ったレイアウトが多く、2つ選ぶのは大変困難でした。

でもプレゼントするケースに限りはあるので、強引に2つに絞りました。

kutzoaさんのaliceball

その名の通り、Alice配列に大型のトラックボールを配置したものです。

いやあ、すごいですね。

やってくれる人がいるとは思いましたが、本当にやってくれる人がいて嬉しいです。

是非頒布までしてほしいですね!(圧力)

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nettaboさんのCTWK69

私が好きなBoardwalk風の配列を、よくあるベースキットで埋めやすい配列にアレンジしています。

右上にロータリーエンコーダ、左上にトグルスイッチを備える点も非常にユニークでいいですね。

配線も綺麗で、最もコメントする部分が少なかったです。

何より、スイッチプレートの柄が凄いなと思いました。

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お二人にはバーガンディとレッドのケースをお贈りします。

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他の方もご参加いただき、ありがとうございました。

おわりに

今回はコンテスト形式として見ましたが、今後もレビュー自体は行っていきますので、GL516互換基板の設計にチャレンジする方は是非利用してみてください。

だいたいレビューは1日~3日程度で終了するように実施しています。

また、本記事の指摘事項を全てチェックしてからレビュー依頼する必要はありません。

配線が途中でも構いませんし、迷っている部分が有りましたら気軽にご相談いただければと思います。

参加者の皆さん、ありがとうございました!

本記事に対して問い合わせ等あれば遠慮なく私のDiscordまでどうぞ。

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この記事はNaked64SF v3 Proto3で書きました。